東北・夢の桜街道

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桜への想い
 
 


 桜に魅せられ、毎年、春になりますと、時間をみつけては、桜めぐりをいたしております。歩く場合もあれば、タクシーを数時間借り切って、見物することもあります。
 そのようなことを10年以上繰り返しているうちに、桜の花が、見る人の心を映すものだということに気がつきました。楽しい時は華やかで、悲しい時はさびしい色。そんな、人と桜との関わり合い・・・古代には花見は五穀豊穣を願う行事であったことも考えると、桜は、人の強い祈りや願い、魂の叫びを真剣に受けとめる樹木、花、であると思えてきます。
 多摩川沿いを桜街道にするというのは、単に観光や景観の美しさに貢献するだけでなく、私は、そこを通る人が、生きていることの喜びや、生きていることの証を、感じとることのできる道を作ることであると信じます。多摩川の水そのものが美しくあってほしいという心も自然と沸き起こってくるとも期待します。
 私は、日頃、古典から現代までの文芸作品を、暗記して舞台で語ることを生業にしております。その代表作であり、私にとりまして命の作品ともいえる「しだれ桜」があります。瀬戸内寂聴先生の小説で、京都の巨大な満開のしだれ桜に男女の恋心が重なる名作です。先に書かせていただいた桜への思いが私の中で結実したのは、この小説がきっかけなのです。
 今後のフォーラムの取り組みのひとつとして、この「しだれ桜」の物語を軸に「桜にまつわる語り」を各地で展開することを企画しています。来春、多摩川周辺の各地で皆様とお目にかからせていただくことと思います。春が待ち遠しいです。

2008年9月1日
平野 啓子

 

 

 

 

平野 啓子 プロフィール

 

語り部・かたりすと・キャスター
大阪芸術大学放送学科教授
武蔵野大学非常勤講師(伝統文化研究)

東京都歴史文化財団を経て、「NHKニュースおはよう日本」のキャスターや、大河ドラマ「毛利元就」「義経紀行」の語り等を務める。舞台では、古典から現代まで名作の語りに、光や音響、季節の風物を取り入れ、語りの総合芸術家として、語りの世界に独自の新境地を開いた。国内外で公演し、日本の文化や日本語の美しさを紹介している。文化庁芸術祭大賞、ギャラクシー賞奨励賞、2008年徳川夢声市民賞を受賞。